2026/09/03

- 二次創作や画像加工では著作権をどう考える?
- 他人の作品を複製・加工・公開するとき、どんな権利が関係する?
- 引用や私的使用などの例外は、どんな場合に適用される?
- 日本の著作権制限と米国のFair Useは何が違う?
- 他人の画像をAIで加工するとき、著作権上どこに注意する?
- AI画像加工・二次創作・文章の書き換え・商用利用の4ケース
- AIを使う前に確認したい3つのこと
- 生成AIは画像や文章を加工する方法を大きく変えました。しかし、AIで加工したという理由だけで、第三者の著作物を自由に利用できるようになるわけではありません。
生成AIを使えば、画像の背景や色を変えたり、既存の文章を書き換えたり、他人の作品をもとに新しいコンテンツを作ったりすることが簡単にできます。しかし、他人の画像をAIで加工したからといって、著作権の問題がなくなり、自由に利用できるようになるわけではありません。
画像の著作権を考えるときは、元の画像や作品を利用する権限があるか、AIへの入力や加工によってどのような権利が関係するか、引用や私的使用などの権利制限規定が適用できるか、さらに加工後の結果をどのように利用するかを分けて確認する必要があります。
生成AIで他人の作品を扱う場合は、次の流れで考えると分かりやすくなります。
元の画像・作品 → AIへの入力・加工 → 生成・加工された結果 → 公開・商用利用
二次創作や画像加工では著作権をどう考える?
二次創作や画像加工で他人の著作物を利用する場合、AIで加工したという理由だけで自由に利用できるわけではありません。
インターネットやSNSで公開されている画像にも著作権が存在する場合があります。誰でも閲覧できることと、第三者が自由に複製・加工・公開できることは別の問題です。
そのため、他人の画像を生成AIにアップロードして背景や構図を変えたり、既存作品をもとに新しいコンテンツを作ったりするときは、まず元の作品を利用できる根拠を確認する必要があります。
また、日常的に使われる「二次創作」という言葉と、著作権法上の「二次的著作物」や「翻案」は必ずしも同じ意味ではありません。本記事では二次創作そのものの著作権制度を詳しく扱うのではなく、他人の作品をAIで加工・利用するときに確認したい著作権上のポイントを中心に解説します。
なお、「他人の作品をAIで利用できるか」という問題と、「AIによって生成されたコンテンツそのものが著作権で保護されるか」という問題も別です。AI生成物自体の権利については、AI生成コンテンツの著作権で詳しく解説しています。
他人の作品を複製・加工・公開するとき、どんな権利が関係する?
他人の画像や文章をAIで利用するときは、入力、加工、公開などの各段階で関係する著作権を確認する必要があります。
AIへの入力では複製との関係を確認する
他人の画像や文章を生成AIにアップロードする場合、その技術的な処理の過程で著作権法上の複製などに当たる利用が行われるかを確認する必要があります。
ただし、AIに著作物を入力したという事実だけから、すべての場合に直ちに著作権侵害になると判断することは適切ではありません。
実際にどのような技術的処理が行われるのか、どのような目的・方法で著作物を利用するのか、適用できる権利制限規定があるのかなどを具体的に検討する必要があります。
画像の加工では翻案との関係が問題になることがある
著作者は、その著作物について、翻訳、編曲、変形、脚色、映画化その他の翻案をする権利を有しています。
そのため、既存のイラストや画像をAIで加工した場合、具体的な加工内容によっては翻案との関係が問題になることがあります。
「元の画像からかなり変えた」「AIが新しい要素を追加した」という事実だけで判断するのではなく、元の著作物の表現と加工後の結果との関係を具体的に確認する必要があります。
公開するときは公衆送信なども確認する
AIで加工した結果をSNSやウェブサイトなどで公開する場合には、加工する段階とは別に、公開時の利用についても確認する必要があります。
ある段階で著作物を利用できるとしても、そのことから、その後のインターネット公開や商用利用まで当然に認められるとは限りません。
著作者人格権が問題になる場合もある
日本の著作権法では、著作財産権とは別に著作者人格権が定められています。
他人の作品をAIで変更する場合には、具体的な加工内容や利用方法によって、同一性保持権などとの関係が問題になる可能性もあります。
そのため、「著作財産権の制限規定が使えるか」という問題だけでなく、著作者人格権についても必要に応じて別途確認することが重要です。
引用や私的使用などの例外は、どんな場合に適用される?
日本の著作権法には引用や私的使用などの権利制限規定がありますが、他人の画像をAIで加工する行為に自動的に適用されるわけではありません。
引用には法律上の条件がある
他人の著作物を利用するとき、「出典を書けば引用になる」と考えることがありますが、出典表示だけで著作権法上の引用が成立するわけではありません。
著作権法第32条では、公表された著作物について引用して利用できる場合を定めていますが、その引用は公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われる必要があります。
また、著作権法上必要となる出所の明示についても確認する必要があります。
したがって、他人の画像をそのまま、またはAIで加工して掲載し、作者名やURLを付けただけで、当然に引用として利用できるわけではありません。
私的使用には利用できる範囲がある
著作権法第30条は、個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的として、その使用する者が複製する場合について、一定の条件のもとで私的使用のための複製を認めています。
しかし、私的使用として行った行為と、その後に加工した画像をSNSやウェブサイトへ公開する行為は分けて考える必要があります。
自分だけで利用する場合に適用できる規定があるからといって、その結果を不特定多数に公開する行為まで当然に認められるわけではありません。
第30条の4は一般的なAI画像加工の許可規定ではない
著作権法第30条の4は、著作物に表現された思想または感情を自ら享受し、または他人に享受させることを目的としない場合に、必要と認められる限度で著作物を利用できることを定めています。ただし、著作物の種類・用途や利用の態様に照らして、著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではありません。
文化庁の「AIと著作権に関する考え方」では、生成の指示のために著作物を生成AIへ入力し、その内容を情報解析することに伴う複製等については、第30条の4の適用が考えられる一方、入力した既存の著作物と類似する生成物を生成させる目的で当該著作物を入力する場合には、著作物を享受する目的も併存するとして、同条は適用されないと考えられると整理されています。
したがって、第30条の4は、一般ユーザーが他人の画像を生成AIに入力して加工し、その結果を公開・利用する一連の行為を一律に認める規定ではありません。
そのため、第30条の4があることだけを理由に、「著作権のある画像でもAIなら自由に加工できる」と考えることはできません。
日本の著作権制限と米国のFair Useは何が違う?
日本には米国と同じ一般的なFair Use制度はなく、具体的な利用行為に応じて著作権法上の権利制限規定を確認する必要があります。
また、国によって著作権の制限や例外の仕組みは異なります。日本のルールを確認するときに、米国など他国の制度をそのまま当てはめないことが重要です。
日本:個別の権利制限規定を確認する
日本の著作権法では、著作権者に複製権や翻案権などを認める一方、私的使用のための複製、引用、非享受目的の利用などについて個別の権利制限規定を設けています。
そのため、AIによる画像加工についても、単に「Fair Useかどうか」という一つの一般基準で判断するのではなく、具体的な利用行為と適用できる権利制限規定を確認する必要があります。
AIを使ったことや画像を大幅に変更したこと自体が、独立した著作権上の例外になるわけではありません。
台湾:具体的な権利制限と第65条による合理的利用
台湾の著作権法では、第44条から第63条までに具体的な著作財産権の制限を定め、第65条では合理的利用の法的効果や一般的な判断基準を定めています。
第44条から第63条までのうち、条文自体が「合理的な範囲」を要件としている規定については、第65条第2項の判断基準が関係する場合があります。
一方、それぞれの具体的な制限規定の要件を満たした場合に、すべて改めて第65条の4つの基準を適用しなければならないわけではありません。
そのため、台湾の制度を米国型のFair Useと同じ制度として理解することはできません。
米国:Section 107のFair Use
米国では、Copyright Act Section 107に基づいてFair Useに該当するかを個別の事案ごとに判断します。
主な判断要素は、利用の目的・性質、著作物の性質、利用された部分の量・重要性、潜在的市場への影響という4つです。
米国の判例で議論される transformative use も、日本の著作権法にそのまま適用される独立した判断基準ではありません。
そのため、AIによって元の画像を大きく変更したという理由だけで、日本でも利用が認められると判断することはできません。
シンガポール:Copyright Act 2021のFair Use
シンガポールの Copyright Act 2021 では、一般的なFair Use制度が設けられています。
Fair Useの判断では関連する事情を考慮し、利用の目的・性質、著作物の性質、利用された部分の量、潜在的市場や著作物の価値への影響などが主要な要素として示されています。
米国と共通する要素があっても、シンガポールは独自の法制度を持つため、米国の解釈をそのまま適用することはできません。
英国:特定の法定例外とFair Dealing
英国には、米国のような一般的なFair Use制度はありません。
著作権法に複数の具体的な例外が定められており、その一部についてFair Dealingが要件となります。
したがって、まず具体的な利用が法定された例外に該当するかを確認し、必要な場合にはFair Dealingの要件も検討する必要があります。
日本で他人の画像をAIで加工する場合は、米国のFair Useやtransformative useをそのまま基準にするのではなく、日本の著作権法上の権利と適用可能な権利制限規定を確認することが重要です。
他人の画像をAIで加工するとき、著作権上どこに注意する?
他人の画像をAIで加工するときは、完成した画像だけでなく、元の画像の入力から加工後の公開・利用までを段階ごとに確認する必要があります。
具体的には、次のように整理できます。
第三者の画像 → AIへの入力・アップロード → AIによる加工・生成 → 結果の取得 → 公開・商用利用
AIに画像を入力する段階
例えば、インターネットで見つけた他人のイラストを生成AIにアップロードし、背景や色、人物の服装などを変更するとします。
この場合、最終的な画像が元の作品からどの程度変わったかだけを見るのではなく、まず元の画像をAIへ入力・処理する段階でどのような利用が行われているかを確認する必要があります。
AIへの入力がすべて直ちに著作権侵害になると一律に判断することはできませんが、技術的な処理方法、利用目的、適用可能な権利制限規定などを確認する必要があります。
AIで加工・生成する段階
AIで背景、構図、色などを大幅に変更しても、その変更量だけで著作権上の結論が決まるわけではありません。
元の画像のどのような表現が加工後の結果に反映されているのか、翻案などの権利との関係が生じるのかを具体的に確認する必要があります。
結果を公開・商用利用する段階
加工した画像をダウンロードした後、SNSやウェブサイトに掲載したり、広告、商品、マーケティングなどに利用したりする場合には、その利用段階について改めて確認する必要があります。
AIで画像を生成・加工できたこと自体が、その結果をあらゆる目的で自由に利用できることを意味するわけではありません。
なお、本記事では一般ユーザーが第三者の画像や文章をAIに入力して加工・書き換えなどを行う場面を扱っています。AIモデルの開発における学習データやTDMは別の法律問題となるため、ここでは詳しく扱いません。

AI画像加工・二次創作・文章の書き換え・商用利用の4ケース
AIで他人のコンテンツを利用できるかどうかは、具体的な利用方法や適用される権利制限規定などによって異なります。出典表示、変更割合、AIを使用したという事実だけで、自由に利用できるようになるわけではありません。
ケース1:ネットで見つけた画像をAIで加工する
インターネットやSNSで見つけた画像をAIにアップロードして、背景や色などを変更するケースです。
オンラインで公開されている画像でも、第三者による自由な加工や再利用まで認められているとは限りません。
元の画像を利用できる根拠を確認したうえで、AIへの入力・加工と、その後の結果の利用をそれぞれ確認する必要があります。
ケース2:既存作品をもとにAIで二次創作する
既存の作品をAIに入力し、一部を変更したり、新しい要素を追加したりして二次創作を行うケースです。
しかし、多くの部分を変更したことだけで、その利用が当然に適法になるわけではありません。
元の作品のどのような表現が利用されているか、翻案などの権利との関係があるか、適用できる権利制限規定があるかなどを確認する必要があります。
ここでいう二次創作はAI利用の一例であり、二次創作そのものの著作権制度については別途検討する必要があります。
ケース3:他人の文章をAIで書き換える
他人の文章をAIに入力し、言葉や文章構成を変更するケースです。
著作権はアイデアや情報そのものではなく、創作的な表現を保護するため、単に変更した文字数や割合だけで判断することはできません。
元の文章の保護される表現が加工後の文章にどのように利用されているかを確認する必要があります。
そのため、「30%書き換えれば大丈夫」「50%以上変更すれば問題ない」といった一般的な基準はありません。
ケース4:AIで加工した画像や文章を商用利用する
AIで加工した画像や文章を広告、商品、マーケティングなどに利用するケースです。
AIによる技術的な加工だけで、それ以前の著作権上の問題がなくなるわけではありません。
元の著作物を利用できる根拠と、加工された結果を実際の目的で利用できるかをそれぞれ確認する必要があります。

AIを使う前に確認したい3つのこと
他人の画像や作品をAIで利用する前には、素材の出所と利用権限、適用できる著作権上の制限・例外、そして生成後の利用方法を確認することが重要です。
1. 素材の出所と利用できる根拠を確認する
AIに画像や文章を入力する前に、その素材をどこから取得したのかを確認します。
さらに、著作権者から許諾を得ているか、利用可能なライセンスがあるか、具体的な状況で適用できる権利制限規定があるかを確認する必要があります。
作者名や出典を表示しただけで利用許諾を得たことになるわけではなく、引用などの権利制限が自動的に適用されるわけでもありません。
2. 「どれだけ変更したか」だけで判断しない
日本の著作権法には、一定の割合以上を加工すれば自由に利用できるという一般的な基準はありません。
「30%変更」「50%変更」「AIで全面的に加工」といった変更割合だけを根拠に、利用が適法だと判断することはできません。
どのような表現を利用したのか、どのような利用行為が行われているのか、許諾や適用可能な権利制限規定があるのかを確認する必要があります。
3. AIで加工した後の使い方を確認する
AIで結果を生成した後も、実際にどのように利用するのかを確認します。
SNSやウェブサイトへの公開、広告への掲載、商品の制作など、利用方法が変われば確認すべき著作権上の問題も変わる可能性があります。
また、具体的な加工内容や利用方法によっては、著作者人格権との関係についても確認が必要です。

生成AIは画像や文章を加工する方法を大きく変えました。しかし、AIで加工したという理由だけで、第三者の著作物を自由に利用できるようになるわけではありません。
他人の作品をAIで扱うときは、
元の素材 → AIへの入力 → 加工・生成 → 結果 → 公開・商用利用
という一連の流れを確認し、それぞれの段階で利用できる根拠があるかを考えることが重要です。
特に、画像を大幅に加工したこと、一定の割合を変更したこと、作者名や出典を表示したことだけで、著作権上の問題が自動的に解決するわけではありません。
GenApeなどの生成AIツールで画像や文章を加工するときも、入力する素材を利用できる根拠と、生成・加工された結果をどのような範囲で利用できるかを確認したうえで活用しましょう。
- 1.二次創作や画像加工では著作権をどう考える?
- 2.他人の作品を複製・加工・公開するとき、どんな権利が関係する?
- 3.引用や私的使用などの例外は、どんな場合に適用される?
- 4.日本の著作権制限と米国のFair Useは何が違う?
- 5.他人の画像をAIで加工するとき、著作権上どこに注意する?
- 6.AI画像加工・二次創作・文章の書き換え・商用利用の4ケース
- 7.AIを使う前に確認したい3つのこと
- 8.生成AIは画像や文章を加工する方法を大きく変えました。しかし、AIで加工したという理由だけで、第三者の著作物を自由に利用できるようになるわけではありません。
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